タトゥー裁判の当事者、増田太輝さん
2020.10.3 / Social

【タトゥー裁判】無罪確定した彫師の語る、裁判の真相と今後。

大阪で拠点として活動しているTAIKIです、職業は彫師です。

無罪確定した『タトゥー裁判』の流れについて、おさらい程度に教えてください。

はい。2015年に摘発が始まり大阪でどんどん略式命令を認めていったり罰金を支払っていく中で、自分の順番が回ってきて。「このまま何も起こさないでいくとどんどん広がるんじゃないか?」っていうのも思い、弁護団の人と一緒に最後まで戦うことを決めて。裁判を支援するために「SAVE TATTOOING」を立ち上げ、社会活動もしながら…。棄却されるまでの約5年。ずっと裁判をして、棄却という無罪確定までずっと活動してきました。

判決文でも『刺青を彫るという行為は医療に該当しないということ』と記載があり、彫師が”仕事”として認められたというところもありますし、最高裁判所がこの案件に対して向き合ってくれた…ということだと思います。

おめでとうございます。その時の感情は?

無罪確定を知った時は仕事中でして、すごく携帯が鳴っていいたのは気づいていて。仕事が終わった直後に自分の携帯を見ると弁護団の方々から『すぐに連絡ください!』とメッセージがあったので折り返すと…『上告が棄却されて、無罪が確定しました。』という報告いただきました。

唐突に知らされたことなので、あまり実感がない状態でしたかね。

増田太輝さんのタトゥー

そもそも略式命令が下された彫師と、そうでなかった彫師の違いについて。
業界的には『表面麻酔を使用した彫師に略式命令が下った。』という通念がありましたが、その辺りはどう解釈されていますか?

そうですね。その略式命令を受けている彫師と、そうでない彫師っていうのも実際にでまして。捜査機関である検察が決めていることなので、実際のところは本当にもう自分もわかりませんが。ただ発端としては『文身薬品』からの取引業者が対象になっていました。そもそもは文身薬品の販売の仕方について、二点で違法性があった。と。

まず一つは、キシロカインという《表面麻酔》。あと一つは、グルトハイドと呼ばれる《器具を一次滅菌にかける薬品》。これらの販売を対面じゃなく「インターネットを介して購入」等をすることが薬機法に違反すると。そこで『文身薬品』とのやり取りがあった彫師のリストを持って行き、大阪府警が摘発を始めていきました。その中に僕も対象として入ってました。

ただ僕自身、キシロカインは買ったことなければ使ったこともないです。僕が購入していたのは、グルトハイドという器具を滅菌かけるものだけです。略式を受けた人の中には、実際にキシロカインを購入されていた方もいるとは思います。

グルトハイドはまだタトゥー業界では使用されてるものなのですか?

今はいずれにせよオートクレーブで熱滅菌をかけてしまうので、グルトハイドって『本当は使わなくても大丈夫』で。
熱滅菌をかける前に『液体でつけ置きして一次滅菌』し、”2回滅菌”を行うことになるので、本当は必要かと言えばそうではなかったりします。

ですが、当時は実際に購入されて使用する方もいたので。それだけ『彫師は衛生管理をやっていた。』ということで、悪いことではないとは思います。

では、丁寧に洗浄してるだけなんですかね?

ちょっともう『本当はいらないことをやっていた。』という感じですね。本当に、もう丁寧にやっていたということですね。いろんな情報が一人歩きして『僕がキシロカインを買って使ってる。』って多分思ってるんですね。

そうではないので、これでクリアになればいいなと思っております(笑)

増田太輝さんのタトゥー

TAIKIさんは裁判を起こした当事者で、業界的なとても大きなことじゃないですか。

はい。

ひっそりとされた方々を騒がせた…って言い方はすごく悪いんですけど。それについての説明を彫師さん向けにしたりとか、説明の場を設けられたりする予定とかありますか?

今回の裁判が終わって、そういった説明会を開くっていうことは予定しておりません。

クラウドファンディングでも一度失敗して成功という…貴重な経験をさせて頂いてて。本当に数多くの方々に支援して頂きましたし、タトゥー裁判のクラウドファンディング自体も、色んな訴訟問題がある中での《切り口》になったプロジェクトだと思っているので。ずっと困っていた人達が、少しは声を上げやすい環境になりましたし。

あの時に自分が起こした行動は、今になって『よかったのかな。』と思ってるんで。あとは自分が『SAVE TATTOOING』っていう団体を通じて、何度も説明の場を設けてきました。今後はもうそういった場を設けるつもりは、一切ありません。


タトゥー裁判の当事者、増田太輝さん

違法推奨派というわけではないのですが、グレーゾーンをグレーゾーンなりに理解されている彫師さん…

まぁ、騒ぐなっていうことですよね。

そういった、裁判や協会に対する否定派の方々っているじゃないですか。そういった方々に対して、ご意見とかってありますか?

もちろん反対派の方々の意見は自分の耳にも入っていますし、僕はその意見を反対することもないので、尊重したいなと思います。

一方で、こうなった以上は合法化というか…。時代は変わり続けていくので、安心で安全な環境で業界をこれから作っていかないといけない。これは今後の課題だと思っています。

日本における刺青の美学的な部分のお話です。和彫とかタトゥーってそもそも『アンダーグラウンドのものだからかっこいい。』といったことを言われる方々が一定数おられるじゃないですか。そのアングラの美学の中に『タトゥー=違法行為』が含まれてるかどうか分からないですが。

『—前々から日本の和彫りとか刺青とかは、アングラだと思ってやってきてるから、俺たちは。』という彫師の方々も。ぶっちゃけた話、ライセンス制度になったり合法化することで、美学的に損なわれる要素があったりすると思いますか?

そうですね…。刺青自体、日本で偏見的な考えがあるのは、日本に任侠の文化があったからで。確かにアウトローな文化・任侠の文化が育てたっていうのもありますし。日本の刺青の文化が諸外国のような合法環境になった場合、損なわれる部分もあるとは思います。

ただ、僕としては、時代はどんどん進んでるので。アウトローとしての文化はなくならない、そもそもそういう文化で来てるので。『合法化したから、ずっと歴史が継がれているアウトローの文化はなくなった。』っていうのはない。ただ時代と共に変わりましょうよ。っていうことですかね。

一昔の環境ではなく、時代が変わる中で順応すると言うか。そうやって変わり続けていくことが、タトゥー・刺青業界において、これからの新しい文化として育っていくんじゃないかなと思いますけどね。

タトゥー裁判の当事者、増田太輝さん

それらを踏まえ、彫師/刺青業界に対する『TAIKIさんが期待する動き』について、教えていただけますか?

今、タトゥーイスト協会も発足し始めているので、少しでも協会に入会する方々が増えてくれたら。

本会員に入会すると『衛生管理講習』を受けれて、修了証を自分の名前で印字して、衛生的な保証を掲げられる状態になります。『タトゥーのライセンス制度』を導入することは本当に時間がかかると思いますが、新しい環境を自分たち彫師で作り上げていかないと、何も変わらないとは思いますので。そういった本当、一歩一歩の動きで、タトゥーや刺青を偏見として捉えている方々の考え方も変わっていくんじゃないかとは思ってますね。

環境が変われば、考え方も変わるんじゃないかと。そういったところが課題としてありますし、本当にこれからがやっとスタートラインに立てたんじゃないかなとは思ってますね。

これを国に任せると、今までやってきたような刺青の環境では出来なくなると思うので、『自分たちで自分たちのルールを作っていく。』。本当に、彫師として胸を張ってやっていこうと思えば、やっぱり業界の皆が協力し合ってやっていかないと、この裁判/判決が本当に無意味になってしまうものだと思っているので。

裁判内容についての質問は以上なんですが、最後に伝えたいことはありますか?

こういった取材という場を設けて頂いて、改めて自分の口からちゃんと伝えたいなって。本当にたくさんの方々に支えられた結果、自分が矢面に立ち続けれたので。

本当に支援者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです、心から感謝しています。ありがとうございました。

 

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