2019.1.10 / Artist ユーモア溢れるオールドスクールタトゥー|宮崎-Kowhey氏の遊び心を取材

現代のタトゥーシーンの中でも人気の高いスタイルである、オールドスクールやアメリカントラディショナル。
昨今ではライン・塗り感やモチーフのバリエーションも豊富で、オリジナリティに富んだアーティスト達が、それぞれ独自のスタイルに研鑽を積んでいる。

今回は、独特なオールドスクールを得意する宮崎のタトゥーアーティスト、
Balance TattooのKowhey氏に取材に伺ったため記事にしたい。
彼の作品に滲み出るユーモアの源泉を、彼の愛したかつての幼少期の記憶から遡って見てみよう。

Kowhey
(Balance Tattoo)

ではまず、インタビューを読んでいただく前に、簡単にKowhey氏の活動と、彼の作品をご紹介する。

経歴

Balarance Tattoo|タトゥーアーティスト「Kowhey」

Kowhey氏は宮崎県に2店舗ある「Balance Tattoo」のオーナー兼、タトゥーアーティストである。

大阪で生まれ、20代前半で宮崎に移住。
様々なカルチャーと自然に囲まれながらスローライフを営み、20代後半でタトゥーアーティストへと転身。
遊び心に長けるもどこかクールにハマってしまう、彼にしか描けない独特のタトゥーデザインは、タトゥーを愛するファン層に高い評価を得ている。

Balance Tattoo

Balance Tattoo

1つの店舗はオープンスタジオとして宮崎駅近郊の賑わいの中にあるも、もう片方は宮崎市郊外の海岸線にある穏やかなプライベートスタジオとなっている。

最寄りの駅は「海の見える駅」とも言われており、駅を東に降りると海、駅から西は山という日本でも数少ない駅の一つだ。
田舎慣れしていない方からすると、ある種の異国情緒すら感じてしまうほどの、大自然に囲まれた素敵な場所に彼のスタジオはある。

Kowhey氏の作品

Kowhey氏はトライバルやブラックアンドグレイ等、オールジャンルのタトゥーを得意とするも、特筆すべきは彼のオールドスクール。

トラディショナル|UFOとピザのタトゥー

Kowhey|龍のトラディショナルタトゥー

どこかコミカルで抜け感がありながら、力強いラインやシェイディング、パキッと入ったカラーの作品は非常に綺麗で、それがタトゥーであることを端的に受け手に感じさせる。

Kowhey|スヌーピーのタトゥー

Kowhey氏|ジブリ・紅の豚のタトゥー

既視感のあるキャラクターも彼の手にかかれば、クスっとなってしまうようなユーモアのある作品に一変されるのも彼の魅力の一つ。
インタビューでは、彼の持つキャラクターである「デスヌーピー」についても触れているため、是非読んで頂きたい。

Kowhey氏に取材

宮崎市郊外にある、彼の「プライベートスタジオ」へ足を運んだDOTTの筆者は、本人に取材をさせて頂ける事になった。
ラテン系の音楽と共に、ゆっくりとした時間が流れるスタジオで、彫師を志すことになった経緯、作品やそのルーツについてこう語るのであった。

では、本日はよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。

彫師になった経緯

まず、Kowheyさんが彫師になった経緯をお伺いしたく、そもそも絵やタトゥーに興味を持ったのはいつ頃で、彫師になったきっかけは何なんでしょうか?
もともと俺は美大におって、絵描きとかレコードジャケットを描いたりしたいなって思ってて。

高校の時、そんな真面目に学生してたわけじゃなくて。
高1〜高2に上がる時に、あんまり真面目にいかんもんやから、親が先生に呼び出されて「辞めるか、留年するか、春休みに補修受けに来るか…」って話をされた時に、母親が泣き出して。

ほうほう。
そしたら「絵の道を目指したらどうや?どうせお前は真面目に勉強しないやろ?」って先生に言われて。そっからやね。

Balance Tattoo Design 宮崎

というと、元々絵を描かれていたんですか?
別にアーティストぶって何か描いてたわけじゃなくて、「不良が何もすることないから美術の時間だけちゃんと絵描く」みたいな…感じ?
先生的には中学の美術の評価が良かったり、変わった絵を描いてたから言ってきたんやと思う。

で母親が、栄村先生って画家の先生と知り合いで。
「ウチの子、絵が好きなんやけど、真面目じゃなくて」って栄村先生に相談してたら「そのガキンチョ、連れてこい」みたいになってて(笑)
面白そうやなって行ってみたんやんか。

ほんで栄村先生のアトリエ行ったら、スポーツカーがバシッ!て止まってて、「めっちゃかっこええの止まってるわ〜」ってなってたら、中から葉巻咥えた渋い爺さんが出てきて。

おお〜!いい展開ですね!
「なんやお前か。ほなー、座って絵、描いてみろ。」って(笑)
ほんで描いてたら「あーあかんあかん、こんなんあかんわ」って、で「明日からウチ来い」ってなって(笑)
「頼んでもないのに、なんやねん〜」ってなった反面、なんか、良かったんやろうね。

なんか良い感触だったんですかね?
うん、乗り物も好きやし、爺さんはファンキーやし、なんか態度も横柄で。
でも
奥さんは優しく包み込んでくれる感じやねん。
で、栄村先生のところに高2から2年間、毎日行く羽目になって(笑)

へえ〜!(笑)
そこでデッサン覚えたんやけど、その時には絵で食べたいって思ってたかな。

そこから美大に行くわけですね。
勉強の必要がない、絵のみの枠が少しだけあって、入試は25倍とかすごい倍率やってんけど、たまたま受かって美大に入ることなって。

そこで在学中にサーフィンを覚えて、車にサーフボードとコンロとか積んで、ヒッピー生活してて。
日本中回ってたら、宮崎が波も良くていい感じやったから住み着いて。

Balance Tattoo Design

Balance Tattoo Design|スヌーピー

ほうほう。
毎日サーフィンするような生活をずっとしてたんやけど、すぐ飽きてしもて。
そこで「絵で食べていきたいな〜」って、昔に言うてたん思い出して、20代後半の時にタトゥーマシン買って自宅で始めて、今に至るって感じ。

なるほど…!では一度、絵やタトゥーから離れてた時期があったんですか?
そう。20歳くらいの時に「彫師になりたいな」ってスタジオに見学には行ったんやんか。
でもその頃通ってたスタジオがホンマめちゃくちゃで。
絵もダメやし、衛生管理も、やり方もめちゃくちゃやって、お客さんもアウトローか、ハードコアの人かチンピラかみたいな(笑)
スタジオも煙たいし、ビールの空き缶が転がってるような。

彫師、作業的には自信あったんやけど、来てる人らが違うなって思って、気持ち的に離れてしまって、サーフィンに熱中してたなぁ。
でも、その時も趣味としてずっと絵は描いてたよ。

当時のタトゥーシーンと、理想にギャップがあったんですね。
それから数年後にタトゥーを始めた時には、タトゥーシーンは変わっていましたか?
大阪では既に何軒かしっかりとしたスタジオができていて、トライバルとか梵字とか流行ってて。
タトゥーシーンがこれからグイグイくる感じがしていた。

Kowhey|十字架とイバラ・ハートのトラディショナルタトゥー

Kowhey|宇宙の猿のタトゥー

ありがとうございます。
で、今からおおよそ16、7年ほど前に、Kowheyさんがタトゥーを始められたわけですね。
それはいわゆる独学で?
いろんな人に聞いたりはしたから完全にとは言われへんけど、師弟関係とかスタジオで働いたりは無いね。
絵を教えてもらったんは、栄村先生って画家の方、一人。

タトゥーを始められて、苦悩したことや大変だったことなどはありますか?
大変なのは、絵が溜まってきたら大変やけど、やってることはずーっと一緒で。
ホンマ「まだやってるの?」っていうパンクバンドくらいずっと一緒(笑)

あはは(笑)
感覚的にはそうなんですかね(笑)
今、車で来た道が220号線で、それをずっと北に上がったら駅近くにスタジオがあって、南に降りたらこのスタジオで。
220号線を北上したり、南下したりをずーっとしてるだけ(笑)
海も目の前にあるし、山もちょっと入ったらあるし、バイクのコースもこの海岸沿いが一番好きやし。

やから、決められたお気に入りのところを繰り返し生きてるって感じ。
こっちに来る間にバイクも楽しみながら、向かってる時も待ってるのは好きなタトゥーで。

すごい!素敵なライフスタイルですね!
では、タトゥーが嫌になってみたいなのはなくて?
う〜ん、ないね。


Kowhey氏の作品について

Kowheyさんの作品についてお聞かせください。
まず「デスヌーピー」について教えていただけますか?
これは単に、フラッシュの隙間に「毛が3本生えて、目の尖ったスヌーピー」を描いたら、「それ彫りたい!」っていう人が出てきて。
一回彫ったら、何人か欲しがる人が出てきて、バラエティが増えてってみたいな(笑)

Kowhey|タトゥーフラッシュ

へえ〜!
今でも「これがデスヌーピー!」みたいなのは自分で決めてなくて、その時の流行りとか、ノリとかに合わせて(笑)

ちなみに、いつ頃に誕生したんですか?
もう覚えてないくらい前で、8年くらい前かな……?
ダークサイドのスヌーピーみたいな(笑)

Kowhey|デスヌーピーのタトゥー

Kowhey|警察の骸骨(スカル)タトゥー

いやあ、大好きです(笑)
例えば、子供がスヌーピーの服着てたら可愛かったりするやんか、そのキャラが葉っぱ吸ってたりしたら、なんか滑稽やん?(笑)

デザインは割と「面白いやん?」ってところからですか?
うん、ちょっと「いたずら心」は作品に入れたいって思ってて。
トラディショナルとか、オールドスクールの表現で、ユーモアのある下品なネタをするのが好きかな(笑)

あはは(笑)いたずら心ですか!
他に作品に投影されているようなものってありますか?
あとは子供の頃の感覚で、超合金とかプラモデルとかで遊んでた感覚はいまだに残ってて。
そういう色んな要素が混じってんのちゃうかなぁ。
ほら、ウルトラマンって、カラーリングとかストーリーが結構サイケデリックやったりするやんか。
そんな子供の頃に見た、あんなんとか。

Kowhey|かわいいオールドスクールタトゥー

お客さんとの作戦会議で変わるけど、基本的にはちょっと笑けるというか、クスっとなるような感じが好きかな。
ダメな感じとか、パクってる感をわざと出したり(笑)

デスヌーピーもそうやし、キャラクターを思いっきりパクってるけど、よく見たら違う。
そこからアレンジで、尻尾とか爪が生えてたり、ビームガンもってたら格好いいな〜とか。
子供の頃に超合金で、ガンダムとガイキングを混ぜたりしたいみたいに、「新しいデタラメ」を作るというか。そういう感じとか?

Kowhey|戦隊のタトゥー

Kowhey|スカル(骸骨)とバイクのタトゥー

ほお〜、なるほど!
超合金だけやなくて、全部混ざってんのやんか。
仮面ライダーも、マーベルのヒーローも、10代で熱中したサイケデリックロックも。
あの辺の記憶とか、サイケデリックなカラーリングが自分の中で今も残ってるんやろうね。

話は変わりますが、Kowheyさんのタトゥーや作品に、少なからず影響されているアーティストの方とかっていらっしゃいますか?
俺は……横尾忠則さんかなぁ、キッカケは中学の頃、母親から教えてもらって。

横尾忠則の作品 / 出典:https://nostos.jp/

60年代のサイケデリック体現者で、その影響がある作品も多いよ。
横尾さんの作品を見てタトゥーに落とし込んだことなんか一回も無いけど、絵を単純に昔から見てたから自然に入ってきてる…かなあってくらい。
タトゥーとは別で、素の自分に影響してるっていう意味では、横尾忠則さんが一番最初に出てくるかな。

へえ〜!確かにサイケデリックですね。
エネルギーが凄まじくて、すごくいいよ。
今、両親が住んでいる実家の近くに横尾忠則美術館があって、真剣に見すぎるとその圧倒的なパワーで、めっちゃ疲れる(笑)

行ってみたい!ありがとうございます!


タトゥーシーンについて

今、どんどんファッションとしてタトゥーが楽しまれるようになってきて、可愛らしいモチーフや細線のレタリング等、歴史の無い新しいデザインが流行ってきているような印象を受けます。
そんな、かつてなかった新しいタトゥーデザインの流行について、Kowheyさんはどうお考えですか?
細いラインとかの作品とか、今までになかったニューエイジの作品っていうのかな。
そういうのって一昔に流行った※ニュースクールとかも多分ちょっと似てて。
ようはギャングとかアウトローが好まないような可愛い絵を彫師が彫って、もっと幅広い客層を狙ったわけやんか。

※ニュースクール=1970年代に発祥。定義されたオールドスクールとはデザインが異なり、当時は目新しいデザインとして人気を誇ったスタイル。(諸説あり)

ほうほう。
今、ジャンルとか人間関係に縛られていたタトゥーの業界から、飛び出た若い子達が自由に作っていった結果が「ノンジャンル」というか、ファッションから来てる子らというか。
俺は宮崎でマイペースにやってるから競争してないけど、そこはやる気もアイデアも拝借しちゃいたいくらい(笑)

あはは(笑)
でもホンマに、今自由にやってる子達いるやんか。
そういう子達が今のスピードのまま何年かやってたら、すごいレベルになってるんやろうね。

スタジオからの景色

Balance Tattoo Kowhey氏のInstagramはこちら

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