これから彫り師になりたい方は機械から彫り方までわからないことだらけ。そしてタトゥーインクもまたタトゥーの大事な要素の一つである。
また初めてタトゥーを彫る方も、自分の身体に一体どんなものが入るのか?といったことも気になるだろう。
今回はそんな”タトゥーインクに含まれる成分や危険性、アレルギー反応”について徹底解説する。
プロの方が知っておく必要のある知識は勿論だが、自分の身は自分で守るためにも知っておく必要があることだ。
ConTTents
タトゥーインクの成分
まず最初にタトゥーインクは主に「液体」「担体」「顔料」の3つで構成されている。
液体
そもそもタトゥーのインクに含まれる色の成分「顔料」は、粉末に近く水溶性ではないため液体に溶け込むことはない。
ではそもそもその液体は何で出来ているのか?
タトゥーインクの液体は主に「精製水」と「グリセリン」。
種類によっては「エチルアルコール」なども含まれるが、要は「アルコールが入った無菌の水」だと認識していただければ問題ない。
担体(キャリア)
担体はざっくり説明すると、
「色の成分である顔料を液体に均一に分散させる働き」と、「細菌の増殖を抑制する」といった2つの働きを持っている。
つまりは担体が入っていることにより、「色ムラの無い綺麗な無菌インク」が作れるということだ。
顔料
そしてこの顔料が、タトゥーインクを語る上での最重要ポイント。
ちなみに顔料と言われてもピンと来ない方もいるかもしれないが、染料と顔料は別物。
水に溶けるものが染料で、水に溶けない粉末のようなものが顔料である。
この顔料がタトゥーの鮮やかな色を演出する、「肝」ということになる。
顔料についてここで書いてしまうと非常に長くなってしまうので割愛するが、主に鉱物から作られる天然無機顔料や、有機化合物から作られる有機顔料、またプラスチック顔料など、それぞれのインクによって含まれる顔料は様々である。
その他の成分
他にもマンサクという植物由来のエキスも含まれていることも多い。
このマンサクはタトゥーの天敵である”日焼け”の対策として入っている。
そもそもマンサクベースの日焼け止めも売られているくらいなのだから、勿論 無害だ。
色ごとの成分の違い
伝統の和彫りの墨
和彫りで使われる黒色の墨は必ず固形墨を擦って作られる。
この固形墨は煤(すす)を固めたものである。
煤は炭素粒子なので無機物だ。つまりは和彫りのインクは科学的に分析すると天然無機顔料と精製水から作られるインク、ということになる。
一般的な黒のタトゥーインク
黒色のタトゥーインクの顔料は主にカーボンブラック。
カーボンブラックは炭素粒子なので、黒のタトゥーインクも先述した固形墨と同じように、天然無機顔料由来のインクである。
その他のカラーインク
青は天然ウルトラマリンやコバルトなどの無機顔料やフタロシアニンなどの有機顔料も存在する。
赤色は硫化水銀やカドミウム、酸化鉄などだ。
中でも特に、従来の赤色のインクは硫化水銀の含有率が高くトラブルの多いインクだったのは間違いないが、水銀由来の顔料が含まれるインクは近年は急激に無くなりつつある傾向にある。
タトゥーインクの安全性
ここで気になるのがタトゥーインクの安全性だ。
「炭素や硫化水銀を皮膚に入れて大丈夫なのか?」というのは当然の疑問である。
MSDS
現在タトゥーインクの製造メーカーはほとんどのところが、MSDS(化学物質安全性データシート)を開示している。
MSDSは「この製品に含まれる成分が科学的に安全であること」が記載されているシートだ。
ここでは実際に開示されているタトゥーインクのMSDSを見ながら説明していこう。
今回添付したのは世界的に知名度の高い「Intenze Tattoo Ink」社の「Zuper Black」という黒色のタトゥーインクのMSDSだ。
このように、どこの会社が作った、なんという製品で。住所や連絡先など細かく記載してある。
違うページの成分のところを見ると、「C.I.77266」「Distilled Water」「Glycerine」「Witch Hazel」と記載がある。
含まれる成分は、カーボンブラック(顔料)・精製水・グリセリン・マンサクの4つだけということだ。
他にも欧州連合で制定された有害性化学物質のリスクは無し、また発ガン性や可燃性の無し、トラブルの際の対処法、保管の方法等がしっかりと開示されている。
こういった情報が17のセクション、合計7ページにも渡ってしっかりと開示されているのである。
これなら現代科学に疎い我々一般人にとっても安心が出来る。
インク成分のアレルギー
上記のことよりタトゥーインクが科学的に安全であることはしっかり証明されているが、そもそもアレルギーといったものが存在する。
花粉や犬の毛と同様、人それぞれアレルゲンとなるものは違い、タトゥーインクの成分によるアレルギーの症状が出る場合もある。
こればかりは対策のとりようがないため、少しでも怖い方はアレルギー反応の出やすい色のインクを避けることをお勧めする。
ちなみにアレルギー反応の可能性高いものとして挙げられるのは「赤色」と「黄色」である。これらの色を入れる際は要注意だ。
症状
アレルギーの症状の重篤度は人それぞれ異なってくるが、主に腫れや痛み、化膿などの症状を伴うことが多い。
実は筆者である私も、赤色の塗りつぶしの際にアレルギー反応を経験したことがあるのだが、その際は赤く腫れ上がり、痛痒いような感じであった。
処置としては化膿止めの軟膏を薄めに塗り、清潔に保つこと。これに限る。
私はテラマイシンという軟膏を薬局で処方してもらい安静にしていると、幸い1週間程度で治った。
まとめ
いかがだっただろうか。やはりタトゥーインクには化学物質が含まれるため、それなりにリスクを伴うことなのである。
しかし私達が注意することとしては、「きちんとした衛生管理を施したスタジオを決める」こと。これだけしかない。
あとはタトゥーインクの製造メーカーであったり、スタジオ、勿論アーティスト。
それぞれのプロフェッショナルが、あなたのタトゥーのために最善を尽くしてくれるだろう。
では、良いタトゥーライフを!