職業は、彫師です。
2018年10月21日、一審にて医師法違反と判決が下されたタトゥー裁判の控訴審が開廷された。
日本ではグレーゾーンという扱いを受け続けてきたタトゥー施術の、白黒をハッキリさせる業界にとって非常に重要な裁判である。
今回DOTTでは実際のタトゥー裁判を傍聴に伺ったため、そこで感じたことや、控訴審の争点、彫師の方々の意見なども踏まえて解説を行おう。
これからタトゥーを入れようと考えている方は勿論、「どうでもいい」と突っぱねてきた彫師の方々にも、是非最後まで読んでいただきたい。
ConTTents
はじめに
その他、色々な観点を加味しDOTTでは、意図的にどちらの意見も支持するということは行っていない。
そして今回はこの「医師法違反を不服とするタトゥー裁判」のみを取り上げてご紹介するため、その範疇を超えた経緯などは省略をさせていただく。
最後に、私は法律の専門家ではないこともあり、弁護側及び検察側の主張を歪曲することなくそのまま記述しているだけなので、その点予めご了承頂きたい。
裁判の経緯
まず今回行われた控訴審の経緯として、一審ではどのような判決が下されたのか、解説を行っていこう。
一審判決|被告人の有罪
まず最初に2017年4月に初公判があり、判決が下されたのが同年9月。
被告人は当時、大阪で彫師として活動をしていた増田太輝氏である。
判決は、医師法違反による被告人の有罪。
「タトゥーの施術は医業(医行為)であり、医師でないものが医業を成すことは医師法第17条に違反する。」という法的観点より、有罪の判決が下された。
増田氏は即日控訴し、2018年10月21日に控訴審という流れに至る。
タトゥーは医行為
初公判とその判決では、「タトゥーが医行為か」という点で大きく争われた。
検察側の主張では、医業を「医師が行わなければ保健衛生上危害の生じるおそれのある行為」と定義し、タトゥーの施術がそれに該当するため違法、ということだ。
今回の裁判と争点
そして今回の控訴審では、主任弁護士の亀石倫子氏を筆頭に結成された弁護団のサポートのもと、大阪高等裁判所で裁判が行われた。
控訴審では大きく、
「タトゥーの施術は医行為かどうか」と、
「タトゥーの施術が医行為で、医師法違反だとすれば、被告人の権利侵害になるのでは」という二点が争点となった。
まずは、控訴を行った弁護側(彫師側)の主張をまとめてみよう。
弁護側(彫師側)の意見
開廷すると、被告人である増田氏が証言台に立ち、名前や本籍を申告するところから始まる。
職業を尋ねられた際に、「―職業は、彫師です。」と、堂々たる姿で答えたことが一番印象に残っている。
増田氏は自席に戻り、主任弁護士である亀石氏が「―これは、一つの職業の存続を賭けた裁判です。」と述べ、弁護側の二つ主張が始まった。
タトゥーは医業(医行為)ではない
弁護側はそもそも医業を、「医療及び保健指導に属する(医療関連性のある)行為かつ、医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為」を定義した。
つまりは「医療関連性のある」と、「医師でないと危ない」の、二つの要件が揃って初めてそれを「医業」と呼ぶ、ということだ。
タトゥーイングは健康を害する可能性のある行為だが、医療目的で行われる行為ではなく、そこに医療関連性は無い。
よって、「タトゥーは医業ではない」という主張になる。
憲法上の問題
検察側は一審にて、「施術の危険を防止するには、医師免許を求める以外に方法はない」と主張している。
しかし、海外諸国は施術に許可制度や登録制度を設けることで、タトゥー施術の危険を防止している現実がある。
このように、医師免許を求める他にも彫師として活動をする手段があるのにも関わらず、それをせずに「表現の自由」及び「職業選択の自由」を奪い去るのは、あまりにも過度な制限で、違憲である。という主張になる。
検察側
検察側の主張は下記の通りだ。
タトゥーの施術は医業(医行為)
前述した弁護側の主張では、医行為は「医療関連性のある」と、「医師でないと危ない」の二つの要件があると主張した。
しかし検察側は「医行為の定義に、医療関連性は不要」と主張。
つまり「医師でないと危ない行為は、全て医行為」ということなる。
これは、今回の裁判では、「タトゥーが医業かどうか」を問う裁判であると同時に、「医業の定義に医療関連性が必要か否か」をという点で争っていることもわかる。
憲法について
弁護側の主張した「諸外国のタトゥー体制の例」に対しては、「諸外国とは法的体制が違うため」と切り捨てた。
また法廷では「答弁書の通りです」と発言は少なく、弁護側の主張が終わると淡々とした様子で法廷は幕を閉じた。
次回判決の日時
今回の控訴審の判決が下されるのは11月14日。
傍聴に参加をしていた某彫師が「業界の反対派の人こそ、見に来る裁判なのではないか」と言っていたのが印象的だ。
ニュースで知ることもよいが、自身の目でその場を体感するのも「タトゥーについて知る」という点では有効的ではないだろうか。
まとめ・考察
以上が、今回行われたタトゥー裁判における双方の主張を、ざっくりまとめたものである。
読んでどう感じるかはあなた次第だが、医業の定義が云々など、もはやタトゥーの是非を問うところに話はないというか、論争として少し不毛な争いをしているように感じられた。
確かに裁判とはそういうものかもしれないが、検察側、また裁判官側がタトゥー・刺青に対して自分のことのように考えられているのであれば、争点としても異なっていたのかもしれない。
判決の行方、今後の業界の動きについても目が離せない。
では、良いタトゥーライフを!