2019.4.10 / Artist

ポップで鮮烈なトラディショナルタトゥー|渋谷・UE氏のルーツを取材

日本のタトゥーシーンには様々なタトゥーアーティストが存在し、各々が自身のスタイルにより磨きをかけるべく、日々努力を積んでいる。
日本伝統の和彫りの彫師を始め、トライバル、ブラックアンドグレイ、そしてトラディショナルタトゥーを得意とするアーティストもそうだ。

今回は、日本のトラディショナルタトゥーのシーンでも一際異彩を放つタトゥーアーティスト、The ParlourのUE氏にその作品と、彼のルーツについて取材を行なった。

今でこそ確立されたUE氏のスタイルを少年時代から遡ってみると、そこにはデザインや生き様の核となる要素があったのである。

UE(The Parlour)

ではまず、インタビューを読んで頂く前に、僭越ながら簡単にUE氏のことをご紹介してみよう。

経歴

Photo by Nicole Reed

UE氏は渋谷と中目黒に二店舗ある「The Parlour」というタトゥースタジオで活動をする彫師・タトゥーアーティストである。

一目で彼の作品だと分かるような、独特の作風と漂うアングラ感により、ストリートのカルチャーとの結びつきも強く、多くのクリエイターに絶大な支持を受けている。

かくいう私も彼の大ファンであり、プライベートで彼に施術をお願いしたことがある。
一度「The Parlour」に足を踏み込むと、どこか異世界に迷い込んだような、ゾクゾクさせる魅力があるのだ。

UE氏の作品

UE氏の作品はトラディショナルがメインとなるが、その作風は世界でも類を見ない。
トラッドと定義するにその色彩は鮮烈で目新しく、非常にクールで味のある作品に仕上がっている。
それでいてポップなモチーフと、遊び心の効いた構図のバランスが非常に良いためか、彼にしか創り出せない絶妙な世界観を描画しているのである。

しかしシェイディングなどの技法や、全体的な構成を見ると、どれも伝統を感じずにはいられないところがUE氏の魅力の一つ。
他にも、※カスタムワークが主流の日本において、※フラッシュワークを得意としたりと、彼がタトゥーにおける歴史・ルーツを大切にしていることは言うまでも無いだろう。

※フラッシュワーク
タトゥーフラッシュ(既成の下絵)を元にオーダーする方法
※カスタムワーク
フラッシュが無く、下絵作りからオーダーする方法

UE氏にルーツを取材

DOTTの筆者である私は、「The Parlour」に足を運び、その作風や彼自身のルーツについて本人に取材をさせて頂けることになった。
彼の歴史を少年時代より遡ると、今の作風に投影された、彼の愛するカルチャーを垣間見た貴重な取材である。


宜しくお願い致します。
宜しくお願いします。

ではまず、タトゥーアーティストになった経緯についてお聞かせ下さい。
絵はそもそも子供の頃からずっと描いていました。
ガキの頃だと、ガンダムとかビックリマンシールとか、そういったものの模写から始まって。
クラスに一人はいる、絵が上手い奴って感じでしたね。

で、タトゥーを初めて見たのは小6、中1辺りです。
兄貴の友達の影響で、Social Distortionとか、Green Dayとか、パンクロックを聴くようになって。
そうするとジャケットとかで海外のタトゥー、それも洋彫りを目にするので「あれなんなんだろうな?」とは思っていました。

なるほどです。ではタトゥーの入り口はパンクロックになるんですかね?
本当にただ、一番のきっかけのきっかけですね。
その後、中2、中3で周りの影響とかもあって、みんなヤンキーみたいになるじゃないですか。
そういうときって、和彫りとか、日本の悪っこいものを好きになるんですよね。

そのときには既に漠然と「刺青がかっこいい」と自分も思っていて。
なので、タトゥー・刺青として、興味を持ったのは和彫りからです。

UEさんの刺青に対する初めての興味は、その少年時代から。
またそれも、和彫りにあったということですね。
初めて「かっこいい!」と思ったのは、和彫りですね。
その後、高校を卒業して地元の彫師さんに、龍の刺青を彫ってもらうことになるんですが…。

15歳くらいの時に初めて繁華街で遊んだのが楽しくて、地元から出て街の飲み屋とかに遊びにいったりして。
時代もあって、ヤクザの人と知り合ったりするんですよね。
その中に一人、女を両脇に連れてファーのコートとか着た、あるおっちゃんがいたんですよ。
顔とかもすごいカッコよくて、「あの人は何なんだろうね?」って話を友達としてたりしてて。

ほうほう。
で、高校卒業して初めて彫りにいったら、ドアから人がガチャっと出てきて、彫師さんがそのおっちゃんだったんですよ。

ええ!すごい。実は既に出会っていたってことですね!
「あ〜この人、彫師だったんだ」ってその時は思いますよね(笑)
ファーストタトゥーで、ハガキサイズをお願いしたんですけど、既に胸から肘上までの下絵が準備されていて。
その方に「絶対こっちの方がかっけーから」って言われたんで、「お願いします」って。

最初のオーダーとは違う提案で、承諾されたということですね。
それはまたどうしてですか?
その時、刺青を入れるより先に「この人かっこいい。」って思っちゃったんですよね。
今はもう、四年前に癌で亡くなられました。

なるほど、ありがとうございます。
当時のUEさんの中で、その方への憧憬は大きかったということですね。
はい。
その彫師さんの生き様を勝手に見てて、18歳の頃にファーストタトゥーを入れてもらって。
気持ちの高ぶりは感じたんですが、当時は「彫師になりたい」とか、そういうものではなくて。

では、いつ頃からUEさんは、彫師になりたいと思っていたのでしょうか?
その方に彫ってもらいながら、右腕に別のところで刺青を入れてもらっている時くらいなので、19の頃くらいですかね。
それまではペースを落とさず月一、二で彫りにいってたんですけど、で、19の終わりに初めて「道具を買ってみよう」という決心をして、からスタートです。
なので、自分の場合は完全に独学ですね。

マシンの使い方や作品について、参考にされたアーティストさんはいらっしゃいますか?
やはり、一番最初に彫ってもらった和彫りの彫師さんです。
なので最初は和彫りというか、龍、鯉、虎とか、そういうモチーフを彫っていましたね。
物語がない生き物っていうんですかね、まずそういうのを描けるようになろうって思って。

実は「弟子にして下さい」って話もしたことはあるんですか、「これ以上は弟子を抱える気はないから」って仰って。
でも、「彫りに来たときとか、絵や写真を持ってきてくれたら、アドバイスは出来るよ」って言ってくれてたので、彫師さんに見てもらいながら、彫る練習をしながらって感じでした。

貴重なお話、ありがとうございます。
彫師として活動をし始めて、苦悩していた頃とかはありますか?
タトゥーに関しては無かったかもしれないです、そもそも好きで、楽しいことなので。

ただ、逆に言えばずっと今も苦労して、苦悩してって感じでもあって…。
今でもデザインの落としどころ一つで考えたりってのはありますし。
タトゥーというより、絵ですね。
アートワークという観点での方が、難しいなって思うところはあります。


今UEさんは、トラッドワークに始まりオリジナリティ溢れる色使い・タッチの作品を彫られていると思います。
ありがとうございます。

作品を見ていると、音楽やグラフィティ等の「タトゥーとは異なるカルチャー」から影響を受けている部分もあるのかなと思っていたのですが、
「タトゥーに落とし込んでいるかも」というカルチャー等はありますか?
ん〜。昔のディズニー作品……ですかね。

ええ〜!意外ですね!
UEさん、ディズニーお好きなんですか?
ディズニーは好きですね。昔のやつで、それもかなり古いものなんですけど。
今はキャラクターも増えたと思うんですが、昔からいるミッキーとかミニーとかのメインキャラが好きですね。

内容もかなり今と異なっていて、昔は報道規制とか無かったんでもっとダイレクトに描かれていたんですね。
例えば超ビンボーな家庭に生まれたミッキーの話とか、カネ・ドラッグ・人種差別とかがもっとダイレクトに。
ディズニーのその部分の影響も大きい気はします。

そうだったんですね。
では、独特の鮮やかな色使いに、ディズニーの影響もあるということですかね。
うーん…。
あとは、若い頃に遊んでた時のサブカルチャーというか。
そこで得た経験が、アートワークや色使いに出ているのかもしれないですね。


では最後に 、UEさんへタトゥー業界についてご意見を聞かせてください。
DOTTの読者では、「タトゥーは偏見があるからいい」「刺青はアングラの文化」「ファッションとして親しまれるべき」など、ファンの間でも様々な意見が出ています。
UEさん個人的に、「タトゥー・刺青はもっとファッションとして、公の場に出てくるべき」だと思いますか?
んー。難しいですが、日本の和彫りは出ないほうが良いんじゃないですかね。
本来の歴史、美学的な部分や、今までの先輩の方々がやってきたことで考えると、おそらく和彫りはファッションだったり、敷居が低くなってはいけないものなのかな、と。

ほうほう。
洋彫り(タトゥー)に関しては、ファッションとしてもアリなんじゃないかなと思います。
勿論、その中で質やセンスの部分は問われますが。

わがままを言ってしまうと、和彫りはよりインに入ってほしいというか。
誰もが簡単に彫りにいけるようなもので、無いものであって欲しいという気持ちはありますかね。

カメラマン:Nicole Reed

The Parlour UE氏のInstagramはこちら

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