2018.1.17 / Social 刺青・入れ墨・タトゥーの違いとは|彫りもの・紋々の定義と歴史

最近はタトゥー(刺青)がファッションとして認知されつつあり、タトゥーを入れた若い人を目にする機会も増えたように思える。
また、掲示板などでもタトゥーに関する議題がよく挙げられているが一度は見たことが、
あるのが
「それはタトゥーではなくて、刺青だ。」といった指摘である。

果たしてその指摘は本当に適切で、「タトゥー≠刺青」なのだろうか?
今回DOTTでは、そういった世に蔓延る適当なイメージをバッサリ切り捨て、”明確な線引き”を見出すべく解説を行っていこう。

結論

まず、これから下記にそれぞれの語句の歴史、使われ方などを解説していくわけだが、時間の無い方のために結論だけ先に述べる。

「現代で使われている、”刺青と入れ墨とタトゥーの明確な線引き”は無い。ただ言葉の生まれ方や、当初の用途が違ってくるため”本来の用途は違う”」という結果に至った。
また、言葉の生まれた順番としては「彫りもの→入れ墨・黥→もんもん→刺青→タトゥー」であった。

では、これからそれぞれの語句ごとに分けて歴史をご紹介していく。

刺青を表す言葉

辞書

まず、定義もまだ決まっていないながら、早々「刺青」や「タトゥー」という言葉を使ってしまったことをご了承頂きたい。

現在日本で「装飾目的で、皮膚に針等を用いてインクを入れる行為」を表す言葉として、挙げられる主な語句は以下の通りである。

  • タトゥー
  • 刺青(いれずみ・しせい)
  • 入れ墨(いれずみ)
  • 彫りもの
  • もんもん
  • 黥(げい)

筆者の個人的な”頻繁に見聞きする順”で羅列させてみたが、まずは「タトゥー」という言葉の歴史・意味から解説していこう。
※また、今回の解説では全て、「アートメイクを除く」とさせて頂く。

タトゥーという言葉

現在「タトゥー」という言葉を聞くと、主に洋彫りを思い浮かべる方が多いのではないだろうか。
まず、タトゥーという言葉の歴史、また定義、日本での位置づけなどについて詳しくご紹介していく。

歴史・語源

タヒチトライバル

タトゥーという言葉が広まった時期・歴史については諸説があり、正確な時期を名言するのは難しい。
しかしタトゥーの語源が「タタウ」というタヒチ語に由来している、ということが分かっている。

タヒチ(タヒチ島)は、古来よりポリネシアンタトゥー、トライバルタトゥーが盛んな地域だったことが知られている。
詳細については「7つのトライバルタトゥー」を是非ご覧頂きたい。

ちなみに、日本で「タトゥー」という言葉が使われるようになったのは1900年代後半、海外のバンドが日本で流行るようになった頃からである。

意味や用途

オールドスクールタトゥー

日本での「タトゥー」という言葉の明確な線引きは無いが、「装飾目的で身体に針等を用いてインクを入れる行為全般」を指すとして構わないだろう。
種類、場所に問わず、そのような装飾は全てタトゥーなのである。

ただ、この意見に苦言を呈する彫り師の方々もおり、”小さいワンポイントで描かれたもの、洋柄のもの、人に見せるものがタトゥー”と定義する者もいる。

刺青(いれずみ)という言葉

次に耳にする語句が、刺青(いれずみ・しせい)では無いだろうか。
ではこの語句の歴史や意味を紐解いていこう。

歴史・起源

谷崎 刺青

そもそも「刺青」という言葉は、作家”谷崎潤一郎”が造った「造語」である。

「刺青」は1910年に同人誌に掲載された彼の処女作であり、当時の読み方は「しせい」だ。
谷崎氏の書いた「刺青」について書き始めるとキリがなくなってしまうため、一行で述べるならば、”彫り師が女の背中に女郎蜘蛛を彫る話”といったところだろうか。

谷崎氏の「刺青」が人気を博し、後に「いれずみ」という読み方がされるようになったわけだが、そこから「入れ墨」という言葉は既に存在していたということが汲み取れる。

意味や用途

今日本で刺青とタトゥーを区別する明確な線引きは存在せず、広辞苑を見ても「タトゥー=刺青」となっているのが現状である。

そのため語句としては刺青も”総称・全般”という扱いになる。
しかし刺青ときくと和彫りをイメージする方も多いことから、「刺青は和彫りのものだけ」と定義する者も多い。
参考記事:和彫りの意味やデザイン−日本伝統の刺青に迫る

入れ墨という言葉

では読み方が同じ「入れ墨」はいつ生まれた言葉で、どのような意味合いだったのだろうか。
これが意外にも今のタトゥーとは違う意味で用いられていたのである。

歴史・起源

黥刑の図

「入墨」というのは装飾目的のタトゥーとは違い、”刑罰”が目的である行為を指す言葉として生まれた。

1720年、日本は当時の中国を参考に、犯罪者に入れ墨を施す”入墨・黥刑”の制度を施行した、という文献が残されている。
当時の刑罰については詳しく別記事でご紹介する予定だが、顔に”犬”と彫っていく刑罰や、腕に一本線をいれるものなど様々であった。

意味や用途

和彫り

現在日本では、入れ墨と刺青に使われ方の違いはない。
そのため、入れ墨と刺青とタトゥーは全て同義に”総称”として用いられていることが多いだろう。

しかし彫り師の中にはその歴史を知っているが故、入れ墨と呼ばれることを嫌う彫り師もいる。

彫りものという言葉

現在の日本の刺青のような文化は、江戸時代 初中期(1600年代前半〜後半)頃から始まり、同時に「彫りもの」と呼ばれるようになった。
彫り物は火消しや鳶など、服を脱ぐ機会のある職につくもの装飾目的で好まれ、今とは少し違うワンポイントのデザインが多かったようだ。

しかし精神性という面では、現在の日本の刺青の根底にあるものが既にあり、今でも「入れ墨(刑罰)と呼ばず、彫りものと呼んでくれ」という彫り師もいるくらいだ。

ちなみに「彫りもの」は、現在あまり使用されないが、和彫りのみを指して彫り物と呼ぶことが多い。

もんもんという言葉

紋々(もんもん)は「倶利伽羅紋々(くりからもんもん)」という言葉が由来で、そこから刺青全般に使用されるようになった語句である。

現在の日本では、もんもんは大阪の俗語だとされ、関東でもんもんという言葉を用いていることは少ない。
意味としては和彫りのみだと定義する者が多いだろう。

倶利伽羅竜王

金泉寺にある倶利伽羅竜王

また、倶利伽羅紋々とは、”背中に倶利伽羅竜王を背負った刺青”のことを指す。

背中などに大きなモチーフ・図案を彫るようになったのは凡そ1800年代初期からだとされていることより、語句の年表が浮かび挙がってきた。

結論・まとめ

以上のことをまとめると、現在用いられている語句の意味は下記のようになる。

・タトゥー
洋彫り・和彫りを問わず総称だと定義されるが、現在は主に洋彫りを指すことが多い。

・刺青
タトゥーと同義で総称だと定義されるが、現在は主に和彫りを指すことが多い。

・入れ墨
本来の用途は刺青と違い刑罰だったが、現在は刺青と同義で用いられる事が多い。

・黥(げい)
入れ墨と同様に元々は刑罰に用いられてた言葉。現在はあまり使われない。

・彫りもの
本来の用途と同じく現代まで引き継がれる、和彫りを指す語句。

・もんもん
本来は特定の柄のみを指す言葉であるが、現在は主に大阪地方で使われ和彫りのことを指す語句

つまり「タトゥーではなくて刺青だ!」「犯罪者の証だ!」という指摘は完全に間違っているわけではないが、現在は「タトゥー≒刺青」として扱われることが多いのが現状だ。

また歴史を遡っていくと、言葉の生まれた順番は、
「彫りもの→入れ墨=黥→もんもん→刺青→タトゥー」だとされる。

いやはや、言葉というのは奥が深く、歴史を投影する非常に面白いものだと、再認識させられる。
和彫りについては下記記事でご紹介しているため、是非参考にして頂きたい。

では、良いタトゥーライフを!

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