街中で、服屋さんで、バーや居酒屋、ライブハウスで。
様々なシーンでタトゥーを目にすることが、増えてきたように感じられます。
タトゥーは一生消えないものとして認知されていますが、その1つ1つに持ち主の確固たる想いが込められています。
もし話しかけられるのであれば、そのタトゥーにはどんな想いが込められているのか、またどんな人柄で、どんなお仕事をしているのか聞いてみたいものですよね。
「YOUR TATTOO」は、タトゥーの持ち主の人柄や人生を「タトゥーを通して知ってみる」。
そんなDOTTの連載企画です。
ConTTents
孫GONGとは
今回DOTTで取材させていただいた方は、YOUR TATTOOでは初の著名人、ラッパーの「孫GONG」である。
まず、インタビュー内容に入る前に、孫GONGの経歴や楽曲をご紹介みよう。
経歴
孫GONGは、京都を拠点に活動行う日本人ラッパーである。
「父親が京都の老舗ヤクザの組長」という壮絶な家庭環境に生まれるも、そんなレッテルには引けを取らぬ楽曲のクオリティとキャラクターが瞬く間にリスナーの心を鷲掴みに。
そして2018年6月には自身のアルバム「狂都」をリリースするなど、今最もアツいラッパーの一人と言えるだろう。
楽曲
孫GONGの楽曲には、彼自身が感じてきた経験やストリートの「リアル」が、痛々しいほどに書き綴られている。
「狂都」の収録曲であり、彼の代表曲の一つでもある「ありがとう」では、複雑な家庭環境や、ドラッグに浸った日々、マイクを握り始めた話を通じ、感謝の気持ちの在り方を伝える。
そんな彼の無骨でメッセージ性の強い「ありがとう」は、きっとあなたの胸を打つことだろう。
YOUR TATTOO
今回は孫GONGに「YOUR TATTOO」としてお話を聞かせていただけることになったため、DOTTにてご紹介しよう。
彼自身がタトゥー・刺青が日本でどう捉えられているかを真摯に考える姿勢が伺える。
よろしくお願いします。
よぉしゃーーす!
では、存じていますがお名前とご年齢をお願いします。
孫GONG、31歳です!
お生まれが…?
生まれが京都の伏見すね。
で、小学校卒業すると同時に、京都の山科の方へ引っ越しました。
ありがとうございます。では、ご職業もお願いします。
ラッパーです!
ありがとうございます!
孫GONGさんは、お父様がヤクザの組長をされていて、壮絶な環境でお育ちになったものだと承知しております。
また、「幼少期から刺青を見ていた」と伺いましたが、どのような刺青を見られてきたのですか?
それはもう本職(ヤクザ)の方の刺青を見ていたので、七分とか全身の和彫りとか…。
よく見るワンポイントのタトゥーとかとは全く違って、全身って感じ。
でも俺の親父は、おかあちゃんの「刺青入ってるヤクザの組長なんか、ごまんとおるから。アンタくらい入ってへんくても渋いんちゃん?」ってパンチラインにやられて入れてへんかったんですけど(笑)
あはは(笑)そうなんですね。
私は「ヤクザの世界」に詳しくないのですが、どのような時に刺青を目にしていたんですか?
基本的には事務所に組員が集まるんで、そこで見ることとか。
あとはヤクザって家族になることなんで、銭湯とかもよう皆で入って、そこでも刺青は見てましたね。
なんで自分とかは、刺青に触れる時間は他の人に比べて、かなり多かったと思います。
幼少期に刺青を見て、一番最初に抱いた印象とかは、どんな感じでしたか?
俺は「かっこええな〜!」って思てましたね。
「オッちゃん、これどうやって入れたん?」って聞いたら「寝て起きたら入ってたんや」って言うてましたけど(笑)
ヤクザ屋さんて大体、自分の組のお抱え彫師みたいな人がおるんで、その人が彫ったもんなんで、みんな自信持ってはりましたよ。自分の刺青に。
へえ〜〜!
最初に刺青をみて純粋にカッコいいと思えたのは、そもそもお父様やヤクザの方に対して「かっこいい」という気持ちがあったということなんですかね?
そうすね〜。
今のヤクザとかはわからんけど、昔の人らは男らしかったんで、小さいながら「かっこええな〜」とかは思ってました。
なるほどです。
それからご自身で初めて「刺青を入れたいな」と思い始めたのはいつ頃なのでしょうか?
う〜ん。マイク握り始めた16くらいの頃からは「入れたいな〜」とは思い始めてたんですけど。
まぁ俺こういう家系もあって兄貴もヤクザんなったし、お母ちゃんが普通の生活したことなくって。
俺はそこに「俺ぐらいは普通の生活したりたい」って思ってたから、見えへんところに入れようとは思ってました。
ありがとうございます。
では、一つ一つタトゥーについて伺えたらと思うのですが、上半身でまず最初に入れられたのはどちらでしょうか?
このロゴで、4年前とかっすね。
もともと愛彫って彫師やってる奴が仲良くて「孫くん彫らせて下さいよ」ってところから始まって。
これ「背骨本舗」って書いてあって自分らのクルーのロゴなんですけど、これは愛彫が作ってくれたロゴで。
「これ、無料で彫るんで来てください!」言われて彫ることになった感じすね。
へえ〜!
そっからこれ、俺京都好きやから京都タワー。
でも京都タワーで真っ直ぐ建っててもアレやし、俺の人生は曲がりくねった道のりやから曲げたれみたいな(笑)
あはは(笑)確かに曲がってますね!
これも全部、愛彫さんがデザインされたんですか?
そうすね、この左肩の刺青も。
これはiTunesで12ヶ月連続配信って企画をやって、そのときに入れてもらいました。
牛魔王なんですけど「孫悟空の敵は牛魔王やから牛魔王入れましょうや」て経緯で、「近くに敵を置く」って愛彫の提案で入れたっすね。
「孫GONG≒孫悟空」ってことですね!
ほんでここ(赤い部分)にコウモリおるんですけど、中国で「コウモリが五匹揃ったら幸せになる」みたいなんがあって。
やし敵から身を護ってくれってんすよ、愛彫が。
愛彫さん上手ですね!めちゃくちゃ繊細!
そう、やし何も心配してないっすね。
信頼関係ですね。この龍はどういう経緯なんですか?
これは「神龍」です!気持ち的には(笑)
あ、ドラゴンボールの!(笑)
この「祭遊鬼」って文字も愛彫が書いてくれたんですけど、神龍も「夢叶う」って意味を込めてくれたんやと思いますよ。
もともと「孫くん、胸に正面龍渋いっすよ〜」って愛彫が言うんで、「マジで?やろやろ〜!」言うて入れましたね(笑)
アーティストさんにお任せな感じなんですね。
そうっすね、拘りが無いって言ったらそれは違うんですけど、彫師さんは選んでるんで。
「この彫師さんやし任せる」で、「ほな孫やったら思いっ切り描いたんで」っていう、その関係性っすよね。
なるほどです。
他のタトゥーについても伺ってもいいですか?
他、「音羽」と「山科」と「狂都(キョウト)」の文字も愛彫に彫ってもらったやつっすね。
地元ですね!
そう、山科の音羽が地元なんすよ。
最近は小学生も中学生もドラッグで捕まってましたけど(笑)
音羽事情が凄い(笑)
そう(笑)
このアルバム名にもなっている「狂都」っていうのは、どういう意味がこもっているんですか?
これ、アルバム名が自分の中で決まった時に入れた奴なんですけど。
良い意味でも悪い意味でも「この街狂わしたいな」とか「音楽で変えたいな」ってのがあって。
俺がやってる音楽は日本語やし、日本語ラップで「京都から色んな街を狂わしたい」っていう。
例えばHIPHOP聞かん奴が聞くようになっても、その人の人生観を狂わしてるってことやし。
そういうメッセージ性を持たせて「狂都」って感じですね。
ありがとうございます。
また今は、お腹にダルマを彫られているところで。
ダルマは、「祇園だるま」のソイさんに入れてもらってるところですね。
祇園だるまの8周年の時に「8周年のモデルなってくれや」って話になって、「ほな足いこかな〜」て思ったんですけど「いや、腹やろ〜」ってソイさんが(笑)
ほな「ソイさんの渾身のダルマ頼んますね!」って今、入れてもらってるところですね。
へえ〜!
でもそういう記念の時に話を掛けてくれたのも凄い嬉しかったですし、「ほんまに俺で良いの?」ってなったけど、彫ってほしいって素直に思えるような人なんで。
そもそもソイさんとの関係は、どう始まったんですか?
俺の先輩の刺青彫ってたりしたのもあるし、京都のラッパーってことでお互い存在自体は知ってて。
で、一緒に飲む機会があった時に初めて会って、お互いベロベロやったからソイさんがノリで頭突きしてきて(笑)
(笑)
ほんで俺も、バーンって頭突きし返したんすよ(笑)
ほな「俺にこんなことすんの、お前ぐらいやわ!」ってなって仲良くなってって感じですね(笑)
へえ〜!!(笑)
いくつかご質問なんですが、まず孫GONGさんがタトゥーをいれる「目的」って何ですか?
うーん。その人の時間の共有っていうか。
例えば、ソイさんはLIVEとか自分を表現しているところを見れくれてるんで、逆に俺もソイさんが自分を表現してるところを見てみたかったり。
彫ってる間に話してんのも楽しいし、クラブとかバーじゃなくてそういうときにしか話せへんこともありますし。
その人との時間を大事にしたいっていう、彫師さんと密接に繋がれる時間の共有すね。
なるほど、それは分かります。
あとは純粋に自分がみたらかっこええってのもありますね。
自分のタトゥーを見たときに「かっこええわ〜。あ、愛彫に連絡しよかな〜。ソイさんに連絡しよかな〜」ってのもなりますし、人間関係の架け橋にもなっているというか。
では、刺青が芸術として好きというのは大前提であり、そもそも彫師の方に人として惚れて、もっと繋がっていきたくてって感じですかね?
そうっすね〜!それは結構ありますね。
そこで人間関係を作ってって〜みたいなのも彫師さんに限っては一つの手段じゃないかな〜とは思ってます。
ありがとうございます。
また、メディアでご自身の刺青を取材された際に「怖い」とナレーションが入っていたのを拝見したんですが、「刺青=怖い」について、孫GONGはどうお考えですか?
そら、しゃあないんちゃうかな、日本の風潮として。
まぁちょっとでも「綺麗やな〜」とか「芸術なんやな〜」とか思ってくれる人が増えてくれたら良いですけど、それは俺とかアーティストの立ち振る舞いが重要すよね。
「怖い」じゃなくて「かっこええな」って思わせるのも俺らの仕事やし、そこは気引き締めてやらんとかっこ悪いし、彫師さんに失礼ですよね。
確かに、おっしゃる通りです。
俺がもし刺青放り出して喧嘩ばっかしてる奴やったら「刺青=怖い」やし。
タトゥー出してイキってる奴は嫌いやけど、それは少数派なんで。
その少数派より、ほんまに刺青が好きで、もっと世の中からよく思われるように行動している大半の方を見て欲しいなって。
みんな一つ一つに思い入れがあるわけで、誰も人を威嚇するためにいれてるわけじゃないと思うし、そこは履き違えんといてほしいなって思いますね。
ありがとうございます。
では最後に、タトゥーを入れたいけど悩んでいる方へ向け、一言いただけますか?
俺としては、入れたかったら入れたらいいと思うんすよ。
自分が自信をもって彫りたいって思える作品とか、このメッセージは身体に刻んでおきたいっていうのがあるんであれば、彫らへん方が後悔するんちゃうかなって。
ちゃんと信頼できる彫師さん選んで、自分の彫りたいかっこええタトゥー入れたらええと思います。
お風呂入るときとか、ふと自分で見たら「かっこええな〜〜!!」とか思うから。
迷って後悔するくらいなんやったら、今入れといた方がええんちゃうかな。
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