2017年9月27日、刺青(タトゥー)が違法か否かの裁判の判決が出た。
検察が主張する「タトゥーが医業」だとする意見と、被告側の「タトゥーは医業ではない、アートだ」という意見のぶつかりあいだ。
今回はその裁判までの大まかな流れと、筆者である私自身の考察も交えてご紹介していく。
ConTTents
法的観点で見る刺青
刺青に関する法律
まずこれを大前提に話を進めたいのだが、現在 日本には”刺青(タトゥー)の施術を抑制する法律は無い”ということだ。
※厳密には青少年育成保護条例により17歳以下への施術は禁止とされているが、ここではその話は省かせて頂く。
アートメイクによる法規制
刺青(タトゥー)が違法なのではないかと騒がれだしたきっかけは、実はアートメイクなのだ。
かつてアートメイクが流行っていた時。眉等の部位のアートメイクの施術を受けた者から感染症等のトラブルが続出し、2001年に厚生労働省が法規制をするにまで至った。
それは”「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」を医師免許を持たない者が行った場合、医師法第17条に違反になる。違反した場合には3年以下の懲役か100万円以下の罰金、もしくはその両方が科される。 ”というものであった。
この法規制がタトゥーの施術にも該当してしまうため、今日本では違法ではないかという位置づけにある。
次々に起こる摘発
2010年7月
兵庫県警が彫り師で暴力団組員の男を逮捕。
2010年9月
広島県警が彫り師の男を逮捕。ここで少し落ち着きます。
2015年2月
熊本県警が自称彫り師で暴力団組員の男を逮捕。
2015年8月
大阪「チョップスティックタトゥー」の彫り師5人を逮捕。
2015年11月
名古屋「エイトボールタトゥースタジオ」の彫り師4人を逮捕。
考察
上記を見てわかるよう、元々は暴力団関係の彫り師を筆頭に摘発を行っていたが、それが一般のタトゥーアーティストに飛び火したような印象を受ける。
その証拠に警視庁は「暴力団組員の彫り師の売上が、暴力団の資金源になっていることも視野にいれて捜査を進めている」と明言しているからだ。
それは分からないことも無いが、何も一般のアーティストまで摘発するのは少々やり過ぎではないだろうか。
タトゥーに医師法を問う裁判
そしてこれらで摘発された中の一人、大阪のアーティスト”増田太輝氏”が、”タトゥーアーティストに医師免許を求める”ことに疑問を持ち立ち上がり、裁判を起こした。
そして2017年4月に初公判を終え、同年9月の27日に判決が下された。
両者の主張
検察側
医業を「医師が行わなければ保健衛生上危害の生じるおそれのある行為」とし、タトゥーの施術は医業であると主張。
つまりはタトゥーの施術行為により、感染症や皮膚の疾患を招く危険性があるとし、これが医業に該当する。とのことだ。
弁護側
対して弁護側は、医業を「病気の人の傷病の治療・診断のため、医学に基づいて行われる行為」とし、タトゥーの施術は医業ではないと主張。
また施術に関しては安全に行える環境にあったことを証言し、医業であることとその危険性を否定した。
そして同時に、増田太輝氏の「職業選択や表現の自由侵害」を強く主張。彼はアーティストであることを選び、アーティストとして生きることを決心した”彫り師”であるからだ。
そして判決
長瀬敬昭裁判長は「タトゥーの施術は医療行為」と述べ、増田太輝氏に15万円の罰金を言い渡した。タトゥー側が負けたのである。
つまりは裁判長は「タトゥーの施術は医師が行わなければ危害の生じるおそれがある」と判断したことになる。
判決後
増田太輝氏は判決後の記者会見で、納得がいかない旨と即日控訴を表明。またこのような否定的で住み辛い世の中にがっかりしたようにも見えた。
考察
あまりにも酷い判決で驚きである。
個人的にタトゥーが大好きな私としては、少しタトゥー側に寄った主張になるかもしれないが、気を悪くせず聞いてほしい。
先ずは増田太輝氏、彼が今後の日本のタトゥー業界のためにいくつもの犠牲を払い戦ってくれていることを強く讃えたい。彼が行っている裁判は多くの人に注目を浴び、興味を寄せ、法律に対して多くの疑問を寄せることになる。
一審で負けようが全然まだ終わっちゃいないのだ。
また、判決については法律に疎いため大層なことは言えないのだが一言。
医業か否かはさておき、検察側がこんな戦い方をしようと何一つ問題の解決には繋がっていない。結論、タトゥーの施術で感染症や皮膚の疾病を引き起こさなければそれでいいのではないか。
なら「医者ではないから施術は違法!」ではない。「アーティストがどうタトゥーを施術していくか」だ。そこの解決に少しでも意識を向けない限りは、問題も摘発も不平も全て収まったりはしないのだ。と個人的には思う。
まとめ
いかがだっただろうか。これらが摘発~判決までの大まかな流れである。
アーティストと検察側の戦いはまだ終わっておらず、ここからもっと大変になってくるかもしれない。
しかしこう、タトゥーというあまり地上に出ることのなかった文化が、形はどうあれ多くの人々の関心に触れ、考えを持ってもらえることには非常に喜びを感じる。
今後の日本の刺青、タトゥー業界について国民単位で考えていける国になればいいなと思う。
では、良いタトゥーライフを!