刺青・タトゥーのには様々なスタイルが存在し、それぞれ独特の表現技法が備わっていることが多い。
中でも今回ご紹介するのは、日本が誇る和彫りの「額彫り」と「見切り」というものについてである。
額や見切りは、一見ただの背景かのように思えるが、このデザインに日本の和彫りの本質が詰まっているともいえるだろう。
ConTTents
刺青における額とは
額とは、図柄の背景に黒の濃淡のみで描かれるもので、日本伝統の和彫り独自の表現技法である。
そのため海外のトライバルタトゥーやオールドスクールタトゥーで、この額を目にすることは基本的には無く、額彫りは和彫りの象徴だとされている。
水の流れや風、雲に見立てた独特のパターンであるため、背中や腕などに描かれた図柄をより引き立たせると共に、デザインに躍動感を持たせる意味を持つ。
そうして全体を見たときに、見る者を圧倒するような和彫りの作品に仕上がるのである。
額彫りの種類やデザイン
額の中には、雲や炎、桜吹雪など、流動性のあるモチーフが混ざっている種類も非常に多い。
正確にはこれらのモチーフは「化粧」と呼ばれ、龍なら雲など、図柄に沿った化粧彫りがよく見受けられる。
雲
炎
波
雷
桜吹雪(桜散らし)
江戸時代における刺青の額
刺青が爆発的に大衆に浸透した、江戸時代にも額は彫られていたのだが、そのデザインは少し今と異なる。
現代では一つ一つの流れの隙間に、色の抜けている部分がある。
しかし昔は全て繋がっており、塗りメインで額のデザインが構成されている。
これはこれで、非常にいい味を出している。
見切りとは
「見切り」は額と混合しがちだが、肌と墨の入った部分の境目、見切られた部分の総称である。
刺青の端っこのようなイメージを持っていただければと思う。
この見切りの上手い下手で、彫師の技量が分かると言っても過言では無いほど、和彫りにおける重要な要素の一つである。
見切りの種類
また見切り方には様々な種類があり、それぞれ違う名称がついている。
一見どれも同じようにみえる見切りだが、もし和彫りをいれようと思っているのであれば、こだわるべき要素の一つなのかもしれない。
牡丹見切り(ぼたんみきり)
牡丹見切りは、現代における和彫りの見切り方で最もポピュラーな技法で、見切った部分が半円を描くような形が特徴である。
胸の部分(ひかえ)の見切りは、彫師の方にデザインの指定をしなければ、この牡丹見切りになることが多いだろう。
ぶつ切り
ぶつ切り(ぶっきり)は、牡丹見切りとは逆に、見切る部分をスパッと直線で見切る技法である。
袖の部分などで用いられることが多く、比較的スマートな印象を受ける。
曙見切り(あけぼのみきり)
曙見切りは、見切り部分をぼかす技法で、最近はあまり見られることのない、珍しい見切りとも言える。
少し厳つさが減るため、女性の方にもオススメだ。
砂利見切り
砂利見切りは、見切り部分に黒の転々をいれたような見切りである。
ここでは雲の額にその技法が取り入れられている。
いい意味で少し古臭く、味のあるような仕上がりになるのが特徴で、個人的には好みである。
額の上手い彫師
最後に、日本で活動をしている彫師の中でも、個人的に特に額がきれいな彫師をご紹介する。
濃淡のつけ具合は勿論、大胆かつ繊細に彫られた額は、もはやただの背景とは呼べないだろう。
竹蔵
竹蔵氏は大阪・西成で活動する手彫りに拘った彫師である。
先程の砂利見切りの龍も、彼の作品である。
また注目すべき額は非常に大胆で迫力があるため、デザインの構成はモダンだがしっかりと伝統の色も表現出来た、素晴らしい作品を彫っている。
彫ひろ
彫ひろ氏は、東京で活動するフリーハンドかつ総手彫りの彫師である。
彼の作品はまるで、江戸時代のものを再現したような、温かみと歴史を兼ね備えた作品が多い。
ごうち
ごうち氏は京都で活動する彫師で、個人的には彼の額はとても好きなためご紹介。
黒を基調としたモダンなデザインが多く、ぼかしの感じが非常に滑らかで良い。
Gakkin
Gakkin氏は少し前までは京都で活動していたのだが、現在はアムステルダムのプライベートスタジオにて活動をされているようだ。
もはや額が主体となってパターンを描く彼の作品は、海外でも非常に評価されている。
和彫りを通り越して、ある種のブラックワークに近い印象を受ける。
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まとめ
いかがだっただろうか。
刺青の額は背景としての表現技法の一つなのだが、ここまで奥深いものだと知らなかった方も多いだろう。
今後タトゥー、中でも和彫りを入れようと考えている方がいるのであれば、図柄や意味合いも大切だが、額や見切りについて考えてみるのも面白いかもしれない。
では、良いタトゥーライフを!